ホーム > 海洋エネルギーとは > 波力発電

波力発電

1. はじめに
波力発電は再生可能エネルギー利用の一つであり、地球温暖化にともなう二酸化炭素排出規制を受け、世界中で研究が進められている。現在、波力発電装置の研究の中心は欧州にあり、特にイギリスを中心として、小規模な模型の水槽実験から商業規模に近い装置の実海域実験まで精力的に研究が進められている。

2. 波力発電装置開発をとりまく環境
EUは2007年末に持続的な経済成長と温暖化ガス排出削減を目指して「エネルギー・気候変動政策パッケージ」を採択した。その中で以下に示す「3つの20(20-20-20)」を掲げている。1)
1) 温室効果ガス排出削減を2020年に1990年比で20%削減する(条件が揃えば30%に引き上げる)。
2) 最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げる。
3) エネルギー効率を20%引き上げる。

2010年6月にEU首脳会議によって承認されたEUの中期成長戦略Europe 2020でも、2020年までの3つの優先事項の1つ「持続可能な経済成長」の数値目標に改めて「20-20-20」が盛り込まれ2) 、現在EU全体が目標達成のための法案や施策を実施中である。具体的には波力発電装置も含めた再生エネルギー発電開発支援プロジェクトの形成、実海域試験場の整備、グリッド電力網の整備、固定買取り制度(Feed-in- Tariff)の導入、EQUIMAR (Equitable Testing and Evaluation of Marine Energy Extraction Devices in terms of Performance, Cost and Environmental Impact)3) のような実海域実験ガイドラインの制定、IEC/ISO 認証化等が挙げられる。4)

3. 波力発電装置の開発
Table 1に波力装置の方式の分類、Table 2に近年実海域実験を実施した波力装置を示す。Table 2に示した装置は商業フルスケールに近い規模で、またグリッド接続して実験が行われている。フルスケールの波力発電装置単体の実証発電はPelamisやOPTブイで部分的に実証されている。数年後に5-10ユニットから構成されるファームの実証試験、その後大規模な商業ファームの実証試験が予定される。

現在のところ波力発電装置の発電コストは明確ではない。というのはフルスケールの装置がほとんど存在せず、実海域実験も短期間のためである。運用維持コストは装置形式にも依存し、かつ製品寿命が不明であるため、コスト評価はこれからの課題である。ただ、どの装置も海上や海中でのメンテナンスを可能な限り低減する方向で開発を進めている。例えばPelamis は、湾内で全てのメンテナンスできるよう設計されており、機械および電気のコネクタは少々荒れた海象下でも短時間で切断・再接続できるものを独自開発した。

また、コスト算出において発電効率を見積もる必要があるが、出力は海象、発電性能、水深等の要因に依存する。一般的に最大発電量の30-40 %が使用される。さらに、発電装置は主に特定の海象に向け開発されているため、異なる海象海域に設置するためには機器の調整が必要となり、これにもコストが必要となる。
 
Table 1 波力発電装置の分類
形式 動作原理
可動物体型 1. Attenuator 複数の浮体がヒンジ結合され、異なる部分が入射波の異なる位相を受ける。(Pelamis, Dexa
2. Point Absorber 2つの物体から構成され、一方が波により運動し、他方が固定点となる。(Powerbuoy, Seabased, Wavebob)
3. Oscillating Surge Wave Converter 沿岸域海底に置かれた基礎にフラップがヒンジ接続された装置。沿岸では水粒子の運動は楕円になるため、その水平運動成分(サージ)でフラップを前後に動かす。(Oyster, WaveRoller)
振動水柱型 装置が波を切るたびに空気室内の水柱が振動する。水柱振動により空気室内の空気が出入し、双方向に通過する空気流がタービンを回転させる。(Oceanlinx, Wavegen)
越波型 越波型装置はエネルギー収集部、貯蔵部、抽出部から構成される。収集部は広く、貯蔵部でより狭くなることにより入射波が垂直に大きくなる。波は収集器の終端にある貯蔵所で保存され、低ヘッドにあるタービンを回転させて再び海に戻る。(Wave Dragon, WavePlane)
 
Table 2 近年の波力発電装置の実海域実験事例
装置名 製造(運用) 発電機容量 形式 設置海域 設置年
Pelamis P2 Pelamis (E.ON) 750 kW 可動物体型 EMEC, Scotland 2010
Pelamis P2 Pelamis (Scottish Power) 750 kW 可動物体型 EMEC, Scotland 2011
Powerbouy OPT 150 kW 可動物体型 EMEC, Scotland 2010
Powerbouy OPT 150 kW 可動物体型 Reedport, OR, USA 2011
Seabased Seabased 42x25 kW 可動物体型 Sotenas, Sweden 2010-11
Wavebob Wavebob 250kW 可動物体型 Tbd,Portugal 2011
Oyster2 Aquamarine 3x0.8 MW 可動物体型 EMEC,Scotland 2011
Waveroller AW energy 300 kW 可動物体型 Peniche,Portugal 2011
Mutriku OWC Wavegen 16x18,5 kW 振動水柱型 Mutriku, Spain 2010-2011

4. 実海域実験場
波力発電装置では、台風等の異常海象時における装置の生存性が重大な問題になる。装置によって生存戦略は異なるが、一般的には発電を止めて波力を受け流す戦略をとる。一方、台風時に重大な要素部品を保護するシステムをもつ装置もある。例えばWavestarではフロートを水から上げることで、またAquamarine Power 社のOyster はフラップを海底近くに折り畳んで過大な波力による機器の破損を防止する。しかし、ほとんどの場合、極端な波力に耐える構造で建造しなければならない。小規模モデルであれば、百年に一度あるような大きな波については水槽実験できるが、フルスケール機が実海域において長期間続く暴風雨に耐えることを示す必要がある。そのため、プロトタイプ試験用の実海実験場で試験を実施した後、本来の設置ポイントに移動する段階的なプロセスになる。

EUはこの実海実験場の整備にも注力している。実験場のフラッグシップは2004年から運用されている英国Orkney のEuropean Marine Energy Centre (EMEC) である。5) グリッド接続した海中送電設備を整備した4つのバースを持っており、海岸にはデータモニタリングなどの支援設備をもつ。EMEC は現在波力発電機器のベンチマーク実験場となっている。その他、Islandsberg outside Lysekil (スウェーデン)、Nissum Bredum and Hanstholm(デンマーク)、Risiir (ノルウェー)といった実海域実験場も整備されているが実験数ではEMECに及ばない。

また、より大規模な商業発電向きの実験場が英国コーンウォールの北方海岸に建設中である。Wave-hubと呼ばれ、4-5MW のグリッド接続海中送電設備を整備した4つのバースを持つ。6) アイルランド西岸の Belmulletでも実験場 AMETS (Atlantic Marine Energy Test Site) が計画されている。7)  ヨーロッパで最大規模の海洋エネルギーサイトの一つであり、波力装置にとってチャレンジングな実験が行われる。AMETS は2013-14年の運用が計画されている。さらにポルトガル、スペイン、フランスなどで同様の設備が計画中である。

5. おわりに
2010年3月にスコットランドで世界初の商業波力・潮力向けの海域貸与が承認された。8) ペントランド海峡およびオークニー水域で11の波力および潮流発電会社が総発電容量1600MWの開発を行う。波力発電装置は以下の企業が承認された。
1) SSE Renewables Developments (200 MW)
2) Aquamarine Power (200 MW)
3) Scottish Power Renewables (50 MW)
4) E.ON West Orkney South (50 MW)
5) E.ON West Orkney Middle South (50 MW)
6) Pelamis Wave Power (50 MW)

これらの企業は、2014年頃に商業波力発電を開始する予定であり、今後、他の国が続く予定である。

参考文献

1. Commission of the European communities, "Communication from the Commission to the European Council and the European Parliament 10 January 2007 - an energy policy for Europe"
2. Europe 2020 targets
3. Project Deliverables of EQUIMAR (Equitable Testing and Evaluation of Marine Energy Extraction Devices in terms of Performance, Cost and Environmental Impact)
4. International Electrotechnical Commission, Technical Committee No.114, Marine energy - Wave, tidal and other water current converters
5. European Marine Energy Centre
6. Wave Hub
7. Belmullet Wave Energy Test Site (Atlantic Marine Energy Test Site)
8. The Crown Estate, Pentland Firth and Orkney - How the projects could be built