JKA機械振興補助事業
2023年度
アルミ伝熱面をもつプレート式熱交換器の海水耐食に関する研究補助事業
<研究概要>
本研究では、申請者がこれまで培ってきた海洋温度差発電(OTEC)用プレート式熱交換器の研究成果を基に、アルミニウム製伝熱プレートの開発研究の一つとして海水耐食性に関する学術的研究を行う。これまで、アルミニウムの表面処理の違いによるアンモニアの沸騰伝熱性能およびアンモニア耐性の比較実験を行い、陽極酸化の表面処理を行うことで、アンモニアでの使用可能性が高くなることを明らかにした。一方で、熱交換器におけるアルミニウム材料の海水耐性についてはこれまで検証されていない。そこで、アルミニウム伝熱プレートの海水耐性を明らかにすることが必要である。本事業の実験では、アルミニウム製伝熱面をもつプレート式熱交換器を海水循環装置に接続し、長期間の連続通水を行い、通水による伝熱面の変化について観察を行う。実験に用いる伝熱面は、過去の研究で製作した2種類のヘリンボーン型および1種類の平滑型の3種類の表面形状の異なるアルミプレートを使用する。さらにプレート表面を①未処理および②陽極酸化処理した2種類を準備し、合計6種類のテスト用の熱交換器を構成する。通水期間は6か月間とする。伝熱面状態の変化は、表面分析機器を用いて分析を行い、海水による腐食の有無を確認し、海水での使用可能性について明らかにする。
<研究の目的と背景>
海洋温度差発電(OTEC)では熱交換器としてプレート式熱交換器、作動流体としてアンモニアと海水が使用されている。本研究では、これまで培ってきたプレート式熱交換器の研究成果を基に、アルミニウム製伝熱プレートの開発研究の一つとして海水耐食性に関する学術的研究を行う。 OTECは、海洋表層水と深層水の持つ熱エネルギーで発電を行うが、海水淡水化や水産養殖、化粧品製造といった複合利用も可能である。現在OTECは沖縄県久米島とハワイ島に100kW級の実証プラントが稼働しているが、将来の実用化に向けた研究が進められている。ところで、OTECの性能向上のためには熱交換器の性能向上が不可欠となっている。また、熱交換器はOTECプラント製造コストの約1/3を占めるため、その高性能化はプラント全体の低コスト化につながる。これまで、熱交換器の性能向上の研究として、「プレート式熱交換器のアンモニア沸騰伝熱性能評価」「熱伝達率向上に向けた伝熱面形状に関する研究」「伝熱面の表面処理によるアンモニア沸騰熱伝達促進」などが行われてきた。我々は熱交換器の伝熱プレートの材料について注目し、現在使用されているチタンに代わる材料としてアルミニウムの使用可能性について研究を行ってきた。これまで、アルミニウムの表面処理の違いによるアンモニアの沸騰伝熱性能およびアンモニア耐性の比較実験を行い、陽極酸化の表面処理を行うことで、アンモニアでの使用可能性が高くなることを明らかにした。一方で、熱交換器におけるアルミニウム材料の海水耐性についてはこれまで検証されていない。そこで、アルミニウム伝熱プレートの海水耐性を明らかにすることが必要である。本事業の実験では、アルミニウム製伝熱面をもつプレート式熱交換器を海水循環装置に接続し、長期間の連続通水を行い、通水による伝熱面の変化について観察を行う。実験に用いる伝熱面は、過去の研究で製作した表面形状の異なる2種類のヘリンボーン型および1種類の平滑面アルミプレートを使用する。さらにプレート表面を①未処理および②陽極酸化処理した2種類を準備し、合計6種類のテスト用の熱交換器を構成する。通水期間は6か月間とする。伝熱面状態の変化は、表面分析機器を用いて分析を行い、海水による腐食の有無を確認し、海水での使用可能性について明らかにする。
<研究成果>
・海水連続通水実験 (6か月)
6種類の伝熱プレートを挿入したプレート式熱交換器を用いて海水の連続通水実験を行った。図1に実験装置概略図を示す。実験装置は、2台のテストセクション(熱交換器)および海洋深層水(DSW)供給系で構成される。 テストプレートとして用いた6種類の伝熱プレートを図2に示す。実験では、海洋深層水を任意の流量でテストセクションに6か月連続で通水させた。途中、1か月、3か月の時点でテストプレートの取り出しを行い、質量および表面分析により伝熱面の経時変化を観察した。1か月通水後の伝熱プレートの様子を図3に示す。また、図4には表面分析により得られた観察画像の例に示す。 | |||||
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図1 実験装置概略図 | |||||
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(a) A1050 (CA-45) + 陽極酸化 |
(b) A1050 (CA-60) + 陽極酸化 |
(c) A5052 (平板) + 陽極酸化 |
(d) A1050 (CA-45) + 未処理 |
(e) A1050 (CA-60) + 未処理 |
(f) A5052 (平板) + 未処理 |
図2 テストプレート | |||||
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(a) A1050 (CA-45) + 陽極酸化 |
(b) A1050 (CA-60) + 陽極酸化 |
(c) A5052 (平板) + 陽極酸化 |
(d) A1050 (CA-45) + 未処理 |
(e) A1050 (CA-60) + 未処理 |
(f) A5052 (平板) + 未処理 |
図3 テストプレート (1か月通水後) | |||||
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図4 表面分析結果 (レーザー顕微鏡, 1x, 左: 2D画像, 中: 表面粗さ, 右: 3D画像) (A1050 (CA-45) +未処理) |
※この事業は、オートレースの補助を受けて実施しました。