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JKA機械振興補助事業

2020年度
間接式海洋深層水カスケード冷房システム用熱交換器の最適化に関する研究補助事業

 

<研究概要>

海洋温度差発電(OTEC)で使用後の海洋深層水の冷熱を利用した新しい冷房システムの開発と、それに適した熱交換器の研究開発を行う。間接式カスケードの実証のために、本方式に適した海水の冷熱を利用した新しい冷房装置を開発するとともに、その冷房装置に適した熱交換器の開発を行い、間接式海水カスケードを構築することで実証実験を進める。熱交換器は既存のものと新規に提案するプレート熱交換器用伝熱面を組み込んだ熱交換器を使用する。また、海水カスケードを実用化することでOTECの普及と共に将来的にOTECを中心とした新たな地域産業の振興に貢献することを最終目標とする。

 

<研究の目的と背景>

海洋温度差発電(OTEC)は2013年に沖縄県久米島、2015年にハワイで海水を使用した実証プラントが稼働しており、実用化に向けた研究が一段と加速している。海洋温度差発電は電力以外に海水淡水化、水素製造、海水の冷熱利用、水産養殖など副生産物を得る、「複合利用」が可能な海洋エネルギーとして知られ、それに関して佐賀大学では沖縄県久米島においてフラッシュ蒸発式海水淡水化法を用いた実海域における実証実験が2015年から続けられている。ところで、OTECの複合利用の一つとしてOTECで使用した後の海洋深層水を「海水淡水化」「農業分野」と「漁業分野」で連続的に使用し、最後に海に排出するという「海水のカスケード利用」が提案されている。しかし、海水のカスケード利用の実証は、前述の久米島における海水淡水化での実証試験と海ブドウ養殖、牡蠣の陸上養殖での実証試験での利用以外、ほとんど進められていない。特にOTECの負荷変動による排出海水の温度変動がカスケードの下流側施設に及ぼす影響や、海水の汚染が各施設に与える影響については十分なデータがないため、実用化のためには実海水を用いた実証実験が不可欠である。そこで海水のカスケード利用による海洋深層水を各産業の施設に連続的に通水する直接式海水カスケードの弱点である “水質汚染と大きな熱負荷変動”を解決するため、熱交換器を介した間接式海水カスケード方式を提案し、その有効性を明らかにすることである。そこで、本研究では海洋温度差発電と組み合わせた海洋深層水のカスケード利用の一つとして、申請者がこれまで培ってきたプレート式熱交換器の技術をベースに、海洋深層水の冷熱を利用した新しい冷房システムの開発と、それに適した熱交換器の研究開発を目的とした研究を行う。

 

<研究成果>

①単相熱交換実験

5種類の熱交換器を用いた単相(温水-冷水)の熱交換実験を行った。図1に実験装置概略図を示す。実験装置は、テストセクション(熱交換器)、冷凍機、温水タンクおよび温水ポンプで構成される。テストセクションとして用いた5種類の熱交換器を図2に示す。実験では、冷水および温水を任意の温度と流量でテストセクションに循環させて熱交換を行い、その際の温水・冷水側のそれぞれの出口の温度を測定することで、熱通過率および熱伝達率を求める。また、圧力損失の測定も行い、伝熱性能と圧力損失との総合的な評価を行う。実験で得られた熱通過率の例を図3に示す。
 
fig1.png
図1 単相熱交換実験装置概略図
fig2a.jpg fig2b.jpg fig2c.jpg
(a) プレート式熱交換器
チタン伝熱プレート
(b) プレート式熱交換器
アルミ伝熱プレート (CA-45)
(c) プレート式熱交換器
アルミ伝熱プレート (CA-60)
fig2d.png fig2e.png
(d) ブレイズド熱交換器 (e) マイクロチャンネル
図2 熱交換器 (※CA: シェブロン角)
 fig3.png
図3 熱通過率
(プレート式熱交換器・アルミ伝熱面・シェブロン角60度)
 

②海水冷房システム実験

海洋深層水利用冷房システムにおいて、異なる熱交換器を用いた伝熱性能評価を行った。図4に実験装置概略図を示す。テストセクションである熱交換器 (図2)、冷水循環系と水道水循環系、およびエアコンで構成される.また、装置はテストセクション、ファンコイルユニット (FCU、図5)、水タンク、冷凍機、循環ポンプで構成される。冷凍機以外は室内を想定した物置内に設置し、室内温度調整のためにエアコンとサーキュレーターを設置した。実験では、冷水および室内温度を任意の温度に設定し、冷水および水道水を任意の流量でテストセクションとFCUに循環させて熱交換を行う。また、その際にFCUの風量も任意に設定する。熱交換器およびFCUの各流体の出口の温度を測定することでそれぞれの熱通過率を測定する。また、FCUの入口と出口の温度差から冷房性能を求める。冷房性能の測定結果の一例を図6に示す。
fig4.png 
図4 海水冷房システム実験装置概略図
fig5.png  fig6.png 
図5 ファンコイルユニット (FCU) 図6 冷房性能

 

 

 

※この事業は、オートレースの補助を受けて実施しました。

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