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海洋エネルギー貯蔵分野の現在の研究

現在、海洋エネルギー貯蔵分野で行われている研究について紹介します。

1. 水素貯蔵方法の基礎研究
1.1 水素吸蔵合金の水素吸蔵放出に伴う膨張収縮の可視化実験
1.2 水素吸蔵合金の有効熱伝導率計算方法の確立

2. 佐賀大学における水素貯蔵と利用の研究開発

 

水素貯蔵方法の基礎研究

 水素吸蔵合金は安全性が高く、来るべき「水素エネルギー社会」において様々な用途での使用が期待されている。

水素吸蔵合金の利点
     ・比較的低温度(100℃以下)でも水素吸蔵放出が可能
     ・比較的低圧力(10気圧以下)でも水素吸蔵放出が可能
     ・爆発危険性が少ない
     ・省スペース
水素吸蔵合金の欠点
     ・重量が重い

水素吸蔵合金の水素吸蔵放出に伴う膨張収縮の可視化実験

水素吸蔵合金の水素吸蔵放出による膨張収縮の可視化は実験が困難なため、これまでほとんど行われていませんでした。当センターでは、二重構造の容器によって、水素吸蔵合金の膨張により生じる応力と水素ガスの圧力を分散し、可視化実験を行っております。

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水素吸蔵合金膨張収縮可視化実験装置

 

水素吸蔵放出の繰返しで、粒子が崩壊し、充填層の体積が増加する様子が明確に観察されている。

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水素最大吸蔵時の充填層

 

水素吸蔵に伴う膨張、水素放出に伴う収縮が明確に観察されている。

水素吸蔵合金の水素吸蔵放出

<主な発表論文>
M.Matsushita,et al.,International Journal of Hydrogen Energy,Volume 38, Issue 17, pp. 7056 - 7064,(2013).

松下政裕 他,日本機械学会論文集B VOL.78, NO.794, pp. 1810 - 1821, (2012).

 

水素吸蔵合金の有効熱伝導率計算方法の確立

 古くから粉体層の有効熱伝導率の計算方法は提案されているが、水素吸蔵合金のような膨張収縮を伴う粉体層の有効熱伝導率の計算を行うにはモデルの改良が必要となる。空隙率の実験式の導入、接触エリア係数変化モデル構築により、計算方法の確立を目指している。

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水素吸蔵合金の有効熱伝導率の計算例

<主な発表論文>
松下政裕 他,日本機械学会論文集B VOL.79, NO.804, pp. 1664 - 1674, (2013).

 

佐賀大学における水素貯蔵と利用の研究開発

 

再生エネルギーは、例えば太陽光発電は日中しか発電できない、また風力発電では風の影響を大きく受けるなど,安定したエネルギー源ではないという負の特性がある.この特性を平準化するためには,発電された電気を一時的に変換,保存する手段とその利用技術を開発することが喫緊の課題となっている.この視点から,水素の貯蔵および利用に関する基礎および応用研究を進めている.

 

水素貯蔵について


 水素を利用したエネルギー貯蔵の方法には,水素を選択的に急増する合金(水素吸蔵合金と呼ぶ)を利用した貯蔵と高圧状態で直接貯蔵する方法がある.

 

(1)水素吸蔵合金による水素貯蔵


 水素吸蔵合金に水素を貯蔵する場合,水素吸蔵および放出時に化学反応熱が生じる.そして,化学反応速度はこの反応熱によって律速されることから吸蔵合金の熱的性質をまず明らかにし,その反応熱の移動現象を解明することが求められる.
 水素吸蔵合金は,水素を選択的に吸収することからエネルギー産業で生じる副生ガス(混合ガス)から水素を精製ために利用されている.システムとしての運用条件と性能予測に必要な水素吸蔵合金充填層内の多成分ガス中の水素の選択的吸蔵反応と水素を取り出す再生反応(水素放出反応)について,数値計算モデルの構築と実験結果による検証を進めている.
 水素吸蔵合金を用いたシステムの性能予測と最適運用条件の把握に不可欠な水素吸蔵合金微粒子充填層内の熱的輸送性質(実効熱伝導率・実効温度伝導率)および充填層内を水素が流動するときの圧力損失(透過率)について,高圧水素雰囲気で水素吸蔵状態の水素吸蔵合金の試料を用いた測定装置の開発を行なっている.さらに,得られた物性値に基づき,2次元,3次元の水素吸蔵・放出反応解析コードの開発および水素吸蔵合金反応容器の最適化の研究を実施している
水素吸蔵合金は,水素吸蔵の質量分率が高々3 wt%と低い.例えば,3 kgの水素を吸蔵するためには,100 kg の合金が必要となり,非常に重たくなる.しかし,水素吸蔵・放出が1MPa以下の常温で行なうことができるため従って,燃料電池自動車(FCV)ではなく,カウンターウエイトを必要とするフォークリフトへの利用が検討されている.吸蔵合金を用いて,大気を熱源として周辺機器を大幅に簡素化された水素貯蔵容器の開発するようよう研究を進めている.

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水素吸蔵合金熱物性値評価装置(最高使用圧力40MPa,最高使用温度200℃)


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水素吸蔵中の合金カラムの発熱に伴う温度上昇の熱画像

 

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軸対称2次元水素吸蔵合金反応容器内の温度分布(左),水素吸蔵量分布(右)の計算結果の一例 

 

(2)高圧ガス状態での水素貯蔵


 水素を高圧で貯蔵するとき、貯蔵容器内の水素温度は急激に上昇することが知られている.一方,現在開発・利用されている燃料電池自動車用容器は炭素繊維で強化されたプラスチック容器(タイプIV)となっている.国際標準規格の容器(Global Technical Regulation, gtr容器)は,容器内水素温度を85℃以下に保つことになっている.このためには,水素充填中の容器内水素の温度変化を正確に推定する方法の技術・開発が安全の視点から重要な研究課題となる.
 当センターでは,水素充填中の水素温度を推定するための解析コードを開発し,水素充填の実証試験においても,そのコードの正確さが実証されている.この成果が評価され,水素充填に関する国際標準規格(SAE J2601 Protocol) がこのコードを利用して作成された.日本国内では,JPEC-S0003という充填規格で発効されている.
充填プロトコルの1例を図に示す.

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 写真は,JPEC-S0003で運用されている水素ステーションである.現在,日本国内には,約100の水素充填ステーションが運用されている.


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水素ステーション全景写真

 

(3)新しい水素充填システムの研究開発


 水素をFCV容器に充填するためには、水素を約-40℃まで冷却することが求められている.図に示される膨張タービンを利用した新しい充填システムでは,水素を冷却する負荷が大きく軽減されることからこのシステムの可能性について検討を進めている.
 

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